今年一年、折に触れて「利益の質」というものについて考えてきました。
当社の内情について晒すようで大変お恥ずかしいのですが、本記事ではこの一年を振り返って思考を整理する意味で少し「利益の質」というものについて書いてみたいと思います。
当社は2021年1月の設立から自力を信じてやってきましたが、無事この5期目を増収増益で終えることができそうです。
創業当初はがむしゃらに利益を追いかけてきましたが、企業が少しずつ成長していく中で次第に利益の質というものを意識するようになってきました。
ジャイロ・ツェペリと利益の質
お金に色はついていないとよく言われますが、商売をする上ではやはりお金に色はついています。同じお金でも、どのように稼いだのかは重要です。
“利益の質”という概念は古くからあり、ファイナンスや経営分析の観点からは「持続可能性 (Persistency)」や「リスク (Volatility)」といったものが利益率や利益額以外での利益の評価軸として挙げられます。
私たちは利益構造を考えるとき「利益率・利益額」や「持続可能性」、「再現性」といったものに加えて「本質的な付加価値」に重きを置いています。
ここでいう付加価値とは会計上の付加価値(売上 – 外部購入高)ではなく自分たちの仕事が何かの価値を生み出しているという『信念』や『納得』という、非常に主観的な意味での価値のことを指しています。
『納得』は全てに優先する
『納得』は全てに優先するぜッ!!、とジャイロ・ツェペリが言うように、私は自分たちの仕事が何かの価値を生み出していると納得できる場所から利益を生み出したいと考えています。
よく言えば顧客視点なのですが、実態はそうではなく自己満足です。欲を言えば価値を生み出しているという『納得』に加えて、新しいことに触れて『好奇心』を満たせるのであれば尚好しです。
まったく高尚な考え方ではありませんが、私はそれでいいと思ってます。所詮仕事なのです。そして、好奇心を満たすことから学びが生まれ、それが次の仕事へ良い影響を与える、というのがITビジネスの面白いところです。
当社においても「開発者を右から左に受け流すようなSES的ビジネスの話」や、「”いっちょかみ”的な商売が成立しそうな機会」を得ることが時折あるのですが、そこに付加価値があるとは思えず私は商流に入りたいとは思いません。私の基準で言えば利益の質が低いからです。
そこから学ぶことも多くはないのではと思っています。やったことないから知らんけど。
同じ理由で、他社の下請けで動くようなビジネスも現在はすべてお断りしています。
利益構造の転換
一方で、当社が得意とする「ERP/CRMの導入・開発」というビジネスは付加価値が高い仕事であると自負していますし、いまのところこれほど『納得』できる仕事はないと個人的には感じています。
しかしその反面、「持続可能性」や「再現性」という観点から利益の質を上げていくにはとても時間がかかると思っています。当社も含め同業者はどこの会社もリソースが足りておらず、それが劇的に改善できる見込みもないからです。
そのような背景から、当社は昨年から開始した中期経営計画の中で「利益構造の転換」を進めてきました。
その内容は非常にベタなのですが、”自社プロダクトを開発してライセンスビジネスの比率を上げる”というものです。2025年は6つのプロダクトを開発し市場に投入することができました。
「自社プロダクトの開発と販売(ライセンスビジネス)」を私たちの利益の評価軸でみると以下のようになります。
- 利益率/利益額:低い
- 持続可能性/再現性:高い
- 付加価値/納得性:高い
一方、「ERP/CRMの導入・開発(プロフェッショナルサービス)」の評価は以下のようになります。
- 利益率/利益額:高い
- 持続可能性/再現性:低い
- 付加価値/納得性:高い
2025年の実績で言えば、当社のライセンスビジネスから生み出された利益は昨対比で350%となりました。2026年はさらにこれを今年の200%に引き上げる予定です。
持続可能性や再現性の高くないプロフェッショナルサービスに対して、持続可能性・再現性の高いライセンスビジネスの割合を上げたプロダクトミックスを実現することで、会社全体として利益の質を高めていく予定です。
並行して組織づくりを行っていくことでプロフェッショナルサービスにおける利益の質も上げていきます。ここはかなり時間がかかる見込みです。
山小屋と虚業
もう一つ、2025年に当社が行ったこととして「開発センターの開設」が挙げられます。群馬県長野原町の山の中に開設されたこの施設は、社内ではYAMAGOYAと呼ばれています。
私たちが携わっているITビジネスは、ともすれば虚業とも呼ばれ、物理的に存在せず複製が可能な「プログラム」やパワポやExcelからなる「成果物」にまみれて日々を過ごしています。
仕事をするなかで目に見えてモノが出来上がるわけではなく、また出来上がったものはCtrl+Cでいくらでも複製することができます。このような”虚業っぽさ”も「利益の質」や”価値を生み出す”ということの意味を見失いやすくさせてしまっているのではないか、と感じることがあります。
どの業界にもテイカーと呼ばれる人たちがいますが、ITの世界には”パワポくれくれおじさん”や”プログラムコピペおじさん”がいて、今年も幾度となくそのような人たちに遭遇しました。彼らは”価値を生み出す”ということの意味を見失っているように見えます。そして、自分たちもいつの間にかそのようになってしまうことをとても怖く感じます。
ところで、上記のYAMAGOYAは社員・業務委託の方を含めて当社のメンバーが自由に利用できるようになっており、主にプロダクト開発と七輪を活用した酒盛りを行うための施設なのですが、ここの社用地にはブルーベリー畑が併設されています。
2026年、私たちはブルーベリーを収穫して市場に販売するという”実業”に挑戦します。
ここから直接的に利益を生み出すことが目的ではなく、このような”The 実業”に触れることで”価値を生み出す”ということについて改めて考えてみたいし、本業とまったく異なるビジネスに挑戦することから何らかの気づきを得たいなと思っています。
意味があるかどうかはわかりませんが、たぶん何か学べることはあるでしょう。楽しみです。
まとめ
私たちは企業が少しずつ成長していくなかで、ベタに「労働集約型のビジネスから知的集約型のビジネスに転換していきたいなー」と考えて動いています。
その根底にあるのは「利益の質」というものを大事にしたいという気持ち、ジョジョで言えば”納得は全てに優先する”というジャイロ・ツェペリの言葉のようなものです。
・・ということで、いろいろと迷走してしまった1年でしたが、数字でみればそれなりの結果を残すことができた2025年でした。
一方で、変革を進めるなかで社内外の多くの方にご迷惑をおかけしてしまいました。
個人的には非常につらい1年でした。当社にかかわっていただいたすべてのお客様・仕入先様・従業員様に感謝しています。
ありがとうございます。
それではよいお年を。





