Case Study
ERP導入事例:九州教具グループ 様
基幹システムをDynamics 365 Business Centralで刷新業務を横断したデータ連携により業務工数を大幅に削減
業務を横断したデータ連携により業務工数を大幅に削減
長崎県を中心にソリューション事業、ホテル事業、ウエルネス事業を三本柱とするビジネスを展開している九州教具株式会社(以下、九州教具)は、業務ごとにシステムが異なり分断していた業務プロセスの課題を解決すべく、Microsoftが提供する中堅中小企業向けERPパッケージ「Dynamics 365 Business Central」を基盤とする基幹システムを構築しました。
短期間での導入作業を遂行し、複数業務間のシームレスなデータ連携による大幅な業務工数削減を実現しています。
導入企業 | 九州教具グループ |
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Web | https://q-bic.net/ |
住所 | 長崎県大村市桜馬場1丁目214番地2 |
企業概要 | 1946年、長崎県大村市にて「本田文具店」として創業。1950年に九州教具株式会社設立。「誠実にして正確を旨とし社会に貢献すべし」という社是のもと、顧客価値の最大化を目指しています。現在はソリューション事業・ホテル事業・ウエルネス事業を柱に、WLBやダイバシティーの促進など人的資本の強化によって、新たな付加価値の創出に挑戦しています。 |
導入前の課題
導入効果
最小の資本と人で最大の付加価値を創出
1946年に長崎県大村市で開業した文具の個人商店が九州教具の原点です。それから80年近い歳月を経て、同社は長崎県一円を中心に他県にも事業を展開する企業グループへと発展してきました。
複写機の販売やIT機器保守サービスなど最適なビジネスインフラを提供するソリューション事業のほか、ホテル事業や、生活に欠かせない水をローリングストックというインフラにして供給するウエルネス事業が、現在のビジネスの3つの柱となっています。
同社 事業本部 部長 岡村雅彦氏は、「2021年8月に『より迅速な会社運営を行うこと』を目的として九州教具からソリューション事業とホテル事業をそれぞれQ-bicソリューションズ株式会社、Q-bicホテルズ株式会社として分社させました。分社化から3年が経過し、今では事業会社ごとに特色を活かした経営を行うことができるようになりました。Q-bicソリューションズ株式会社では『最小の資本と人で最大の付加価値を創出する』という経営理念を掲げており、お客様に対して業務効率化を中心とした、オフィスの課題を解決する提案をしています。」と話します。
またQ-bicホテルズ株式会社においては人手不足が深刻化する中、フロント業務においてコロナ禍以前から非接触型の自動チェックインの導入を進めてきました。「機械にできることは機械に任せ、人間はお客様のご案内やおもてなしなど、人間にしかできない部分に特化し、集中していこうとしています」と、岡村氏はその狙いを示します。こうした数々の実践によって培われた業務変革のノウハウや知見を、さまざまな付加価値として顧客や社会に提供していくことを使命としています。
複数のシステムでデータが分断している実態が明らかに
そんな九州教具が全社を挙げて取り組んでいるのが、基幹システムの刷新です。
同社 事業本部 リーダーの川添直樹氏は、「社員は営業、販売管理、仕入・在庫管理、経理などのさまざまな業務において日々システムを利用していますが、そうした中で『効率が良くない』『処理が遅い』といった、漠然とした疑問を感じる場面が増えてきたのが、最初のきっかけです」と振り返ります。
具体的にどこにどのような課題があるのかを探るため、事業開発部ではまずハードウェア、ネットワーク、ソフトウェアの3つの観点から各事業部門に対する現業務に関するヒアリング調査を実施。その結果、ユーザーが不満を感じている最大のボリュームゾーンが基幹システムのソフトウェアにあることが明らかになりました。
「さらに深掘りして各業務プロセスを可視化したところ、複数のシステムを利用する中でデータが分断し、連携ができていないことに原因がありました。いったんExcelにデータを取り込んで中間処理を行った後にシステムに戻したり、紙の帳票で出力されたデータを別のシステムに手作業で再入力したりといった非効率な作業に、内勤部門全体の約50%の時間を費やしている実態が浮き彫りになりました」(川添氏)
この課題を抜本的に解決すべく、同社は基幹業務を支えているシステムを全面的に入れ替えることを決断したのです。
「もちろん上述した業務で使用しているシステムを最新バージョンに移行した上で、相互のデータ連携の仕組みを作り込んで業務プロセスを改めるという選択肢もありました。しかし、これまでと同じソフトウェアで見た目も変わらないとなれば、ユーザーの意識を変えるのは簡単ではありません。業務そのもののあり方を変革するためには、システムから変える必要があると考えました」(川添氏)
CRM/SFAからERPまでワンプラットフォームでカバーできる点に着目
こうして九州教具は、新たな基幹システムの基盤となる製品の検討に乗り出しました。
全社的な業務改革を図っていた同社は、当初ERP系およびCRM/SFA系まで主要な製品をまず15本程度リストアップ。その中には、フロントオフィス側のシステムにはSFAやノーコード開発ツールを用い、バックオフィス側にはERPを導入して連携させるという選択肢も視野に入れましたが、最終的に同社が選択したのが、MicrosoftのERPパッケージ「Dynamics 365 Business Central」です。
「絶対に繰り返したくなかったのが既存のシステムで課題となっていた業務間の分断です。当社は、CRM/SFAもERPと統合された形で導入したいという思いも持っていたことから、それを単一のプラットフォームで実現できるDynamics 365 Business Centralが最適な基盤になると判断しました。また、米国のMicrosoft本社を視察訪問した際に、『SMB(中堅・中小企業)向けのソリューションに注力していく』というビジョンを聞き、共感したことも、選定の大きな決め手となりました」(川添氏)
自信を持って開発ができると応えたベンダーを選定
ただしDynamics 365 Business Centralといえども、導入して即座に運用を開始できるわけではありません。システムの標準機能に自社業務を合わせるFit to Standardを基本としていたとしても、必ずといってよいほど各業務との調整やカスタマイズが必要となる部分が出てきます。したがってプロジェクト成功のためには、システム導入パートナーが重要な鍵を握ることになります。
その観点から、同社は今回のプロジェクトにおける導入パートナーの貢献を次のように振り返ります。
「導入パートナーさんには製品選定の段階からアドバイスをいただきました。Dynamics 365 Business Central以外の製品を検討する際に相談したシステムインテグレーターの多くは、当社の要件に対するシステムでの実現可否について、明確な回答をいただけないことが多い中、今回お願いした導入パートナーさんは『この部分はDynamics 365 Business Centralの標準機能をそのまま適用できる』、『この部分に関してはカスタマイズが必要になる』、あるいは『追加開発が必要になる』といった指針を明確に示していただけたので、とても心強く安心して任せられると感じました」(川添氏)
非効率な作業を解消して現場業務を劇的に改善
Dynamics 365 Business Centralの導入プロジェクトは2023年3月にキックオフし、その9カ月後の同年12月にシステムは本稼働を開始しました。
「Dynamics 365 Business Centralの標準機能に自分たちの業務を合わせることを原則としましたが、当然ながら当社のビジネスにも固有のやり取りがあるため、フィット&ギャップを行いながら各業務への実装を進めていきました。その過程で導入パートナーさんには、ユーザーテストを通じて明らかになった問題を解消しながら仕様に反映していくアジャイル開発の手法をリードしていただきました。おかげで業務現場のユーザーからも新たな基幹システムに対して事前に納得を得ることができ、大きな不満や反発を受けることなく短期間でプロジェクトを完了することができました」(川添氏)
こうして同社の基幹システムを刷新したDynamics 365 Business Centralは、早くも大きな成果をもたらしています。
「業務量の変化を分析している最中でまだ詳しい結果は出ていないのですが、システム上でデータがシームレスに連携するようになったことで、従来のようなExcel上でのデータの中間処理や紙の帳票からのデータの再入力といった非効率な作業はほぼ解消されました。現場の業務は確実に改善されています。一例として、売上確認の業務プロセスに注目すると、肌感覚では50%以上の工数削減を実現しています」(岡村氏)
「さまざまな業務改善の効果はペーパーレス化としても表れています。ほぼすべての基幹業務がDynamics 365 Business Centralで完結するようになり、周辺システムともデータ連携が進んだことから、社外との取引の控えなどを紙として残す必要がなくなり、新たに倉庫に保管する帳票の量は約80%削減されています」(船橋氏)
ほかにも、請求書発行についても、「楽楽明細」を導入することで電子化を進め、これまで手作業で行われていた入金消込業務についても、同機能に特化した「V-ONEクラウド」を採用し連携することで自動化しました。
基幹システム側で機能を作り込むことなく、このような周辺のサブシステムとの連携によってシームレスな業務環境を実現できるのもDynamics 365 Business Centralを選定したメリットの1つであると同社は評価しています。
CRM/SFA機能の活用も含めたさらなるシステム活用を検討
もちろんこれらの成果に満足することなく、同社は今後に向けても効率化だけにとどまらないさらなる業務変革を進めていく計画です。例えばPower BIを利用したデータの可視化による経営分析の強化も新たなテーマの1つです。
「従来は複数のシステムにデータが分散していたため、手作業の集計に依存していましたが、現在はDynamics 365 Business Centralに非常に信頼性の高いデータが集まっているため、より精緻な分析が可能となります」(船橋氏)
さらに岡村氏は「すでにCRM/SFA機能の導入検討も開始しました」と話しており、実現すれば、ビジネスの実績値だけでなく見込み値もDynamics 365 Business Centralに統合されていくことになります。より高い生産性で付加価値を生み出す知識集約企業への発展を目指して、同社はチャレンジを続けています。