当社では自社の基幹システムとしてDynamics 365 Business Central(以下BC)を活用しているのですが、本記事ではこの秋にリリースされたBCの新機能である”Payable Agent”というAI機能について2カ月ほど実務で利用して実感した”自律型ERP”の世界について記載してみたいと思います。

Dynamics 365 Business Centralは、マイクロソフトが開発した中小企業向けの多言語・多通貨対応のERPシステムです。販売管理・在庫管理・生産管理・会計・債権債務など、企業の基幹業務をクラウド上で統合的に管理することができます。また、WordやExcel、Teams、Outlookなど、他のマイクロソフトのサービスと組み合わせて業務を効率化する仕組みが多数搭載されています。

AIが勝手に仕事してくれんかな

2025年12月、自宅でスマホを開けば生成AIが作ったサムネイルが目に入ってきて、それをクリックして生成AIが書いた記事を読み、仕事場では生成AIが書いた営業メールやスカウトメールを大量に受け取る世界に私たちは暮らしています。

AIによっていろいろなことが自動化できているにもかかわらず、なぜか自分の仕事は忙しくなるばかりで「AIが勝手に仕事してお金稼いでくれんかなー」と考える毎日です。

そんな中、個人的に待望していたPayable AgentというBCの新機能がプレビューながらリリースされました。

早速2カ月ほど実際に使ってみた中で「思ったより早くAIが勝手に仕事をしてくれる世界が来たわ、お金は稼いでくれんけど」という実感を得ることができましたので、機能の紹介もかねて”自律型ERP”の世界について書いてみたいと思います。

BCのPayable Agent(支払エージェント)機能

Business CentralのPayable Agent(支払エージェント)は、仕入先から受け取った請求書を読み込んでいい感じに処理してくれるAI機能です。

エージェントという名前がついている通り、逐次指示を与えて操作するというよりは割と勝手に動いてくれて必要な時だけ確認を求めてくる、という感じの挙動をします。

詳しく見てみましょう。

Payable Agentは特定のメールアドレスを監視しており、メールが届いたら内容を確認して必要に応じてこちらに判断を求めてきます。以下の例であれば、届いたメールの中に請求書と思われるPDFが添付されていたから支払請求書(Vendor Invoice、つまり仕入伝票)を作ったほうがいいかを聞いてきています。

こちらがOKを出せばまた仕事に戻り、Vendor Invoiceのドラフトを作ってみたから確認してよ的な依頼を出してきます。

必要に応じてチャットで指示を出すこともできますし、あらかたOKであればこちらで引き取って後続の処理を自分で行うことも可能です。

2ヶ月間、実際の当社の仕入先様からの請求書を何十枚も渡して処理をしてみましたが、かなり精度が高い印象です。

従来よりこの手の仕入請求書の自動化を行うツールはありましたが、発注データとの突合が大きなネックとなっておりました。

その辺もBC内部のデータを読みながら割といい感じに処理をしてくれています。

エージェント(自律型)という概念

あまりAIを擬人化して考えるのは好きではないのですが、人間と一緒に働くときと同じで、自律して非同期で動いてくれるというのは仕事を進めるうえでのストレスがとても小さいと感じました。

一方、私自身とても意外でしたが、なんとなく”一緒に仕事してる感”を感じてしまい親しみと同時にそのような状況に何となく不安というか恐怖というかうっすらと違和感を覚えました。

生成AIそのものの破壊力や凄さというものは至るところで語られているので私がいちいち書くこともないのですが、この技術を応用した”エージェント”という概念に実感を持って触れたときに私は初めて「AIが勝手に仕事をしてくれる世界が来てもうたわ。」と思ったのです。(子供の感想文のような内容でなんなのですが・・)

AIリストラは避けられない

2025年時点で、アメリカではAIによって人間の仕事が奪われる「AIリストラ」や「AI就職難」が発生しておりますが、日本で働く人の中に”AIリストラ”に対して実感を伴って不安を感じる人というのはとても少ないと思います。

私の立場からは「少し仕事任せれる相手が増えたわやったー」という気持ちが強いのですが、これは私の本業が”買掛金管理”ではないからであって、自分の本業がAIによって代替されることを想像するととても恐怖を感じます。

まとめ

・・ということで、平たくまとめると「AIを使った新機能を使ってみたら思ったよりすごくて、AIリストラは本当に近い将来に日本でも発生するんだなと感じました。」というのが本記事のすべてです。

“自律型ERPの世界”というタイトルからは想像もできないとてもベタな結論となりましたが、実感を伴ってそのように思えるかどうか、ということはとても重要なことです。私にとっては。

ちなみにBCのエージェント機能はCopilotクレジットを消費するので少しだけ追加でお金がかかるのですが、超おすすめの機能なのでぜひ使ってみてください。

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