海外製ERPを日本企業が導入する場合、手形や電子記録債権の管理は悩ましい問題です。一般的には、カスタマイズをしたりアドオンを構築したりして対応していることが多いでしょう。
しかし、実務の流れをよく考えてみれば、受取手形やでんさいは通常の債権と同じ流れ同じ機能で充分に管理できます。
この記事では、Business Centralの標準機能で手形や電子記録債権を管理していく方法について解説します。
Dynamics 365 Business Centralは、マイクロソフトが開発した中小企業向けの多言語・多通貨対応のERPシステムです。販売管理・在庫管理・生産管理・会計・債権債務など、企業の基幹業務をクラウド上で統合的に管理することができます。また、WordやExcel、Teams、Outlookなど、他のマイクロソフトのサービスと組み合わせて業務を効率化する仕組みが多数搭載されています。
Business Centralの標準機能で手形や電子記録債権を管理する方法
手形や電子記録債権も一つの得意先として管理することで、容易に標準機能に乗せていくことができます。
受取手形という得意先を登録
まず、得意先として受取手形の科目を登録します。得意先転記グループを追加し、債権科目として「受取手形」や「電子記録債権」を設定しておきます。
分析軸として”得意先”を作成し入力必須としておけば、得意先別に手形残を管理できるため尚よしです。
手形を受け取ったとき
手形で回収したときには債権を消し込んで、受取手形(という名前の得意先)に新たに債権を計上します。このとき、伝票番号として手形番号を指定しておきます。
システム的には得意先補助科目/得意先補助科目で仕訳を切る感じです。
手形一覧
受取手形(という名前の得意先)の残高をクリックすれば、手持ちの手形番号の一覧が表示されます。
裏書したとき
裏書をするときは該当の受取手形番号を消し込む形で仕訳を切ればOKです。(以下は直接減額法の例)
期日落ち/割引
満期日を迎えた場合や割引に出したときには、「得意先支払」という機能を使えば、マウスでポチポチしていくだけで手形を現金化する仕訳を自動作成できます。得意先転記グループで差異勘定の設定をしておけば、別途手形売却損の仕訳を切る必要もありません。
資金繰り管理
手形を1つの得意先として管理する場合、資金繰りの観点からもメリットがあります。
手形一枚一枚に対して期日管理がなされるため、期日別に集計すれば入出金予定を加味した資金繰り予定表も簡単に作成できます。
支払手形の管理
支払手形を1つの仕入先として管理することで、全く同じ考え方で支払手形を管理できます。
支払仕訳帳の仕入先支払提案の機能を使うことで、買掛金の支払仕訳を作成するのと同様に支払手形の期日落ちの仕訳も自動で作成可能です。
まとめ
・・ということで、Business Centralの標準機能を活用して手形を管理する方法を解説してきました。
よほど手形の枚数が多いとか、毎月がんがん裏書に回しますとか、支払手形を印刷しまくってますみたいな企業でなければ標準機能で充分に管理可能かと思います。
あとは半金半手的な複雑な入金/支払ルールがいっぱいある場合などはカスタマイズによる対応も考えられますが、この辺はPower BIで振り分け計算および振替仕訳を作成しBCに取り込む、という実装がシンプルでよいでしょう。それでは。