こんにちは。今日はCRM/SFAの導入において直面する“名寄せ問題”について考えてみたいと思います。
名寄せ問題とは?
名寄せ問題とは、読んで字のごとく名寄せに関する問題です。BtoCでゴリゴリのマーケティング活動を行う企業においてはもちろんのこと、BtoBの業態においても問合せ担当者の名寄せ(=同一の企業や同一の担当者を特定すること)をどのように行うかについて悩まれている企業様は多いのではないでしょうか。
なぜ名寄せが重要か
マーケティング活動や営業活動においては一般的に以下のような理由から名寄せの重要性が説かれます。
- 傾向分析のため。マーケティングの実務においては、さまざまな企業からのリード(いわゆる引き合いや問合せ)を管理し分析する作業が必須となります。マーケティング担当者にとって、大量のリードに対して1つずつ業種や地域などの情報を手入力していく作業はとても無駄で苦痛な時間です。これは、リードから企業情報が自動で特定できれば解消できます。
- 商談をスムーズに行うため。お客様からのお問い合わせに対して「おととしの秋にもこのようなお問い合わせをいただいておりましたよね。そろそろご検討が具体化された感じでしょうか?」的な会話をすぐにすることができれば、商談をとてもスムーズすすめることができますね。過去の問合せと今回の問合せの担当者情報を自動でマッチングできれば、誰でもこのような会話の運び方ができます。
- ナーチャリングのため。営業リードタイムが比較的短い業態であれば大きな問題にならないかもしれませんが、引き合いから商談・受注までにそれなりの期間がかかるような商材の場合、いわゆるナーチャリング(リードを温めて商談化させる活動)が不可欠になります。典型的なのがセミナー/ウェビナーに複数回同じ担当者が参加されるケースで、これも毎回のセミナー申し込み情報が自動で企業マスタ、担当者マスタに紐づいていないと管理することができません。
名寄せ問題を解決する方法
ここからはDynamics 365などのCRMシステムを導入する場合における、名寄せの自動化アプローチについて解説していきます。CRMを利用して名寄せを自動化するためにはさまざまな方法が考えられます。
- 外部サービスとの連携:代表的なのがこの方法で、有名なソリューションとしてはDUNSナンバーの利用や、某名刺管理サービスとDynamics 365 (CRM)を連携させて自動化する、という方法があります。Dynamics とは別のサービスを併用することになるため追加コストがかかります。
- Dynamics 365 Marketingを併用する方法:Dynamics 365 シリーズの中にはDynamics 365 MarketingといういわゆるMarketing Automationのツールがあり、この中のマッチング戦略という機能を使うことでリード獲得時に自動で名寄せを行うことができます。こちらも追加のコストがかかります。
- Power Automateを使う方法:個人的に最もおすすめの方法がこちらです。Dynamics 365 Salesなどのライセンスがあれば追加コストなしでPower Automateを利用することができます。ある程度Power Automateの構築ができる方であれば実装はそれほど難しくはないと思います。
追加コスト0で名寄せを自動化する方法
Power Automateを併用することで追加コスト0で名寄せを自動化することができます。この場合、以下のようなロジックで名寄せ機能を実装していきます。
1. 新しいリードが作成されたときに、
2. 会社名とメールアドレスを取得し、
3. 同じメールアドレスを持つ「取引先担当者」の件数(=①)をカウント
4. ①が1以上であればその取引先担当者とリードを紐づける
5. ①が0であれば新しい「取引先担当者」を作成してからリードと紐づける
6. 同じ名前を持つ「取引先企業」の件数(=②)をカウント
7. ②が1以上であれば、その「取引先企業」とリードを紐づける
8. ②が0であれば新しい「取引先企業」を作成してからリードと紐づける
できた
というわけで、実際にはもう少し複雑なロジックが必要になるのですが、私の経験上では月のリード件数が数百件レベルの企業であれば、上記のアイディアをベースにAutomateを組むことで十分に実務に耐えうるレベルで名寄せを自動化できるかと思います。
細かいところでは”株式会社”と”(株)”の違いなど、企業名の表記ゆれへの対応は不十分であるため、この辺は定期的なマスタ整備が必要となります。そのレベルまで自動化する必要があるのであれば、やはり某有名名刺管理サービスなどと連携させる必要があるのかもしれません。。