Microsoftが提供している中小企業向けERPであるDynamics 365 Business Centralに仕訳をレビューする機能が登場しました。
Business Central (BC) は他のDynamics 365シリーズと同様、半年に一度バージョンアップがかかる仕組みになっております。この春のバージョン (2023 Wave 1) における主要な機能アップといえば、ご存じの通り(?)、リスト画面上でピボットテーブルを作る機能や、取引先に紐づく債権債務の科目を伝票単位で変更できる機能なのですが、私が推したいのはその陰でひっそりとリリースされた「仕訳レビュー」という機能です。
単純に仕訳にレビュー済というフラグを立てていくだけのシンプルな機能なのですが、ある設定を行うことで簡易的な消込機能として利用することができ、非常に便利です。
どのような機能か
今回リリースされた仕訳レビュー機能は、以下のように「ここからここまでの仕訳は確認しましたよー」と経理部の偉い人がチェックボックスにチェックを入れるだけの機能です。
もちろん「仕訳入力時点でワークフローが回って上司が承認をかける」みたいな機能は以前から存在していたのですが、経理業務の中には取引が発生した時点では正確な仕訳を記帳するのが難しいもの(例えば原価性の有無の判定など)もあり、このように仕訳入力後に月次でチェックするような機能もニーズがあるのだと思います。
設定方法
科目ごとにレビュー対象とするかどうかを設定を行うことができ、ここの設定だけですぐに使い始めることができます。
ここまでは「ただ仕訳に済印をつけてくだけの機能やん」という感じですが、よく見ると以下のような設定があります。
こちらを選ぶと、一度に選択した仕訳同士で貸借が0になっていないとレビュー済みにすることができないという制約がかかります。
簡易的な消込機能として使えます。
上記のような設定を行った科目に対しては、この仕訳レビュー機能は簡易的な消込機能として作用します。
この場合、レビュー対象の仕訳全体で貸借が0になっていないときはエラーが返ってきてチェックをつけることができないようになります。
補助簿をつけるほどじゃないけど消込を行いたい科目というのは意外といろいろとあるもので、仮払金(≠社員仮払金)や建設仮勘定、ちょっとした仕掛品、帳端処理に絡む各種経過勘定など、頻度は高くないけど雑多な内容が含まれるBS科目を管理するにはちょうどよい機能じゃないかなと思います。あとは物件数が少なければ敷金や保証金の管理なんかにも使えるかもしれません。
また、どの仕訳同士をまとめてチェックしたか(消し込んだか)が自動でグルーピングされるため、あとから確認する際にも「この明細とこの明細がぶつかって消えたのね」ということがわかるようになっています。
当社でもいくつかの経過勘定と仕掛プロジェクト原価という科目を消込対象として設定しておりまして、私もスキマ時間でちまちまと消込を行ったりしています。慣れてくると”ぷよぷよ”的な感じで消していく楽しさがあります。
まとめ
SAPなんかだと任意の科目を統制勘定として指定することで補助簿を無数に持つことができると聞いたことがあります。
一方、BCの場合は消込機能をもつ補助簿というのは最初から決まっているため、これまではこのようなちょっとした消込を行うためには少しトリッキーな設定をする必要がありました。しかし、今回の機能アップにより簡単な消込であれば補助簿を使わずとも軽い気持ちで管理することができるようになりました。
この機能を設計するときに「貸借0じゃないとチェック入らんモードも作っとこうや」とMS本社の誰かが(英語で)言ったのだと思うのですが、超シンプルかつ実務的ですばらしい設計ですね。(上から目線)