当社の社内業務とそれにかかわるシステムデザインについて解説しているこのシリーズ。今回は経費精算についてです。
私たちは創業以来、2020年から自力を信じてDIYで業務を回していこうと考えておりまして、実際に当社がどのようなシステム構成でどのような運用を行っているかを解説していきたいと思います。
システムデザイン
経費精算周りのシステム構成ですが、例によってPowerApps+Business Centralで内製化している感じです。
当社は2020年のコロナ禍に創業したリモートネイティブ(?)な会社でして、基本的に移動があまりなく、したがって経費精算も非常にシンプルです。
Dynamics 365 Business Centralは、マイクロソフトが開発した中小企業向けの多言語・多通貨対応のERPシステムです。販売管理・在庫管理・生産管理・会計・債権債務など、企業の基幹業務をクラウド上で統合的に管理することができます。また、WordやExcel、Teams、Outlookなど、他のマイクロソフトのサービスと組み合わせて業務を効率化する仕組みが多数搭載されています。
経費精算の運用イメージ
PowerAppsで開発している経費精算の画面ですが、以下のように科目と金額を入れて領収書を添付するだけのシンプル設計です。
プロジェクトコードを入れることもできますが、販管費までプロジェクト別に管理することは考えていないため、原価性のないものはほとんどOverhead(間接費)というプロジェクトに紐づけています。
設計のポイント
電子帳簿保存法に対応するため、確定後(仕訳転送後)は添付ファイルの差替えも含めて明細の中味は変更できないようにしています。詳細は割愛しますが、データの所有者と所有部署を分けて管理する”最新の部署”という機能で実現しています。
出張申請の運用イメージ
こちらも割とシンプルな画面になっておりまして、出張目的や期間を記入しこれにかかる経費を登録していく感じです。
ポイント①:日当を自動計算
Dataverseの計算機能(PowerFX)を使って裏側で計算した日当の金額を自動セットする仕組みを組んでいます。当社では出張先の区分(国内・近距離・海外)と役職の組み合わせで日当が決まります。
ポイント②:出張報告は作業明細を紐づけるだけ
何かと面倒な出張報告書の作成ですが、当社では例によってOutlookから入力された作業明細を出張申請書に紐づけられるようにしています。
つまり、作業明細を紐づけたら出張報告完了という社内ルールにしておりまして、わざわざ出張報告書的なものを作成する必要はありません。
ポイント③:海外出張の日当は不課税
国内の日当は消費税課税対象となるのですが、海外出張分の日当は不課税となるため、ここもBCに仕訳を転送するときに簡単な判定ロジックを入れています。
経費計上と精算
PowerApps側で登録された申請情報はBusiness Centralに自動連携され、経費計上がなされた後、Business Central側で精算処理を行います。
Power AutomateでBusiness Centralに自動仕訳を転送
経費精算・出張申請ともに、定期的に内容を確認してBCに仕訳を転送する処理を行っています。仕訳を生成してBCに書き込む処理はPowerAutomateで実装しておりまして、実際の処理はただボタンを押すだけです。
ポイント①:リンクを自動セット
BCには 会議費/社員未払金 という感じの仕訳が転送されます。このとき、対象の明細に対するリンクを自動セットする仕掛けを入れています。
ポイント②:精算を自動化
ここはBCの標準機能になりますが、支払仕訳帳の画面で”従業員支払を提案”というボタンを押すことで未消込の社員未払金を抽出して精算仕訳(社員未払金 / 現預金)を生成することができます。
もちろん全銀データを生成することもできます。これで支払処理は完了です。
まとめ
Teams上で構築するのもアリ
当社の場合は作業明細や工数を一緒に管理しているため、Dataverse上でモデル駆動アプリを開発して実装しているのですが、経費精算や出張申請だけを切り出して構築するのであればTeams上でPowerAppsの開発ができるDataverse for Teamsというプラットフォームを利用するのがよさそうです。
こちらであればPowerAppsのライセンスは不要となり、Teamsを使うライセンスさえあれば同様のことが行えるため、非常に安価に運用いただけるかなと思います。何なら外部ユーザーでも利用できます。
外出が多ければ専用のサービスを使ったほうがよいかも
前述の通り、当社はリモートネイティブ(?)な会社なので電車移動がほとんどなく経費精算は非常にシンプルなのですが、外出が多い企業であればPowerAppsで頑張って構築するよりは経費精算専用のクラウドサービスを使うのがよいのかなと思います。
いわゆる”駅すぱあと連携”的なものの実装について、PowerAppsでの作りこみは技術的にはハードルは高くないと思うのですが、、かと言ってPowerAppsでその辺の開発を頑張る意味があるかというとそれは微妙かなというのが個人的な意見です。
とはいえ、PowerApps + Business Cenralはおすすめ
ただ、経路検索の機能まではいらないよ、という場合はPowerAppsで経費精算の仕組みを実装するのは超おすすめです。非常に簡単に開発できますし、前述のとおりDataverse for Teamsを使えばTeams導入済み企業であれば追加コスト0で利用できます。
・・ということで、いつもながらもやっとしたまとめで恐縮なのですが、当社ではPowerApps + Business Centralを使ってこんな感じで経費精算の業務を回していますよーという記事でした。ご参考になれば。