私たちは2020年の創業時から自力を信じてDIYで業務を回しています。今回は当社のシステム構成を公開するシリーズその2として「管理会計・原価計算」という業務について解説していきます。

システムデザイン全体像

2024年1月現在、当社のシステムデザインは以下のようになっています。基幹系はPower Platform + Business Centralを使って内製化している感じです。

管理会計のポイント

当社はいわゆる「専門サービス業」という業態にあたります。目に見える在庫がないからこそ、原価計算が複雑かつ重要になります。

業績評価

サービス業における「在庫」とは「時間(とメンタル)」です。当社のような中小企業では、どの仕事にリソースを割くべきかをシビアに見極める必要があります。顧客別/プロジェクト別/担当者別で利益管理を行い、不採算プロジェクトからは速やかに撤退することが重要です。

そのため、当社ではプロジェクト、顧客、担当者、事業セグメントという4つの軸で業績を管理しています。

個別原価計算

すべての費用を期間費用として処理するのではなく、適切な基準で配賦し資産計上を行ったり対応する売り上げが計上されるタイミングで原価に振り替えたりする必要があります。費用収益対応の原則というやつです。これを実現するために個別原価計算が求められます。

業務の流れ

当社では以下の流れで原価計算にかかわる業務を回しております。

  1. PowerAppsにプロジェクトを登録
  2. Outlookで作業実績を登録
  3. PowerAppsで工数管理
  4. Power BIで原価計算
  5. Power AutomateでBCに原価仕訳を連携
  6. Power BIでBCの会計データを集計して分析

PowerAppsにプロジェクトを登録

新たなプロジェクトが始まる時、以下のようにPowerAppsにプロジェクト登録を行います。この時、以下のように科目コードやセグメントを登録しておきます。また、請負契約の場合は「繰延日付(=売上予定日)」を登録しておきます。これにより、当該プロジェクトにチャージされた工数相当分の労務費は毎月資産計上され、請求月に売上と原価振替の仕訳が起るような仕組みになっています。

Outlookで作業実績を登録

担当者は打ち合わせ以外の作業時間もOutlookにスケジュールを登録します。

PowerAppsで工数管理

Outlookに登録されたスケジュールは自動でPowerAppsに同期されてきます。これにプロジェクトを紐づけることで、どの作業に誰がどれくらい工数をかけているかが管理されます。

Power BIで原価計算

PowerAppsで管理している作業明細を集計し、Power BIで原価計算を行います。Power BIの集計機能(Power Query+DAX)は非常に強力なため、ある程度の知識があれば配賦計算や仕掛計上とその取り崩しなども柔軟に実装することができます。

PowerBIからBCに原価仕訳を連携

Power Automateを使ってPower BIからBusiness Centralに原価計算の仕訳を書き込みます。具体的には以下の3種類の仕訳を一度に生成して計上します。

原価計上(当月作業⇒当月売上のプロジェクト)
借方 貸方 金額 プロジェクト 担当者
サービス原価 他勘定振替(人件費) xxx X社開発案件 Setoya
仕掛計上(当月作業⇒売上未計上のプロジェクト)
借方 貸方 金額 プロジェクト 担当者
仕掛プロジェクト原価 他勘定振替(人件費) xxx Y社開発案件 Setoya
原価振替(過去月作業⇒当月売上のプロジェクト)
借方 貸方 金額 プロジェクト 担当者
サービス原価 仕掛プロジェクト原価 xxx Z社コンテンツ制作 Setoya

PowerBIでBCの会計データを集計して分析

経過月の情報はBusiness Centralの仕訳データ、未経過月の情報はPowerAppsの作業明細をそれぞれ集計して管理用のレポートをPower BI上で参照できるようにしています。このレポートを眺めて仕事をした気分になってみたり、どの仕事にどのリソースを割くか、どのように事業展開をしていくかみたいなことを考えたりしています。

無駄と好奇心

ゆるい社風とは裏腹に、当社ではそこそこ細かく業績評価を行っています。とはいえ、すべてを定量的に評価できるわけではなく実際には利益率が高くても撤退する案件もあればその逆もあります。定量化できない要因のうち、私は「無駄」と「好奇心」というものを重要視しています。いずれもメンタルに大きく作用するものです。

つまり、脳内では以下の計算式で利益率を計算し判断を行っているということです。

補正利益 = 売上 – 原価 + (好奇心 – 無駄)

無駄

上記で言う”無駄”とは本質的に価値を生み出さない作業のことを指しています。多分に主観的ではありますが、例えば以下のような内容です。

  • 形式的なドキュメント作成(Excel方眼紙とか)
  • 進捗管理/課題管理が大好きな人のためだけに報告書を作る時間
  • 合理的な理由なくリモートNGな打合せのための移動時間
  • 社内用の帳票の承認欄に印影が自動で印刷される、みたいな機能の開発
  • ドラクエの村人的に会話が無限ループする打合せ

これらは中長期的に担当者のメンタルをすり減らす可能性が高いため、見た目の利益率が高くても割り引いて考える必要があります。

好奇心

一方で、個人的にとても重要だと考えているのが「好奇心」です。以下のような特性のあるプロジェクトは多少利益率が低くても取り組む価値があると私は考えています。これらは担当者の好奇心をかきたて、結果、将来的なリターンを生み出すためです。

  • 新しい製品や技術を用いたチャレンジングな案件
  • 未経験の業務分野が含まれる仕事
  • 過去に開発したことがない機能の開発

まとめ

ということで、急に話がズレましたが当社ではこんな感じで管理会計や原価計算をやってますよということでした。何かの参考になれば。

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