私たちは創業当初の2020年から、自力を信じてDIYで業務を回そうというコンセプトのもと自社の業務設計を行っています。本日は当社の業務内容のうち、販売管理/プロジェクト管理という分野について、どのようなシステムを使ってどのように業務を回しているかを紹介していきたいと思います。

システムデザイン全体像

2022年8月現在、当社のシステムデザインは以下のようになっています。基幹系はPower Platform + Business Centralを使って内製化している感じです。

業務設計のポイント:工数入力をほぼ自動化

我々のようなITサービス業は、ざっくり言えば時間を売って利益を稼ぐ商売です。会計的には使った時間がそのまま売上に直結するケース(PL内で処理が完結するフロー取引)もあれば、何らかのプロダクトを開発してそれを販売するケース(BS科目を経由するストック取引)もありますし、ライセンス販売などのいわゆる物販もあります。

しかし、いずれにせよ使った時間に対して利益を最大化できる状態を作り出す、というのが当社のような業態の企業における内部管理のポイントになります。それを実現するには、手間をかけずに正確な工数を集計する必要があります。

手間をかけずに、というのはすごく重要なポイントで、日々各人が行った作業を正確に記録するのはとても大変ですし、複数のプロジェクトに関与する優秀な社員ほど工数入力に時間が取られてしまうという状況は避けたいものです。もっとも避けたいのは”なあなあな組織風土”ができあがってしまうことです。(「面倒くさいからちょっとした作業は記録しないでちゃちゃっとやったろ」というやつです。個人的にはとてもよくわかります。。)

これは、タスクに対して正確な作業時間を見積もる→その通りできたか検証する→できなかった場合はスキル不足なのか見積もりが甘かったのかを考える、という本来あるべき業務サイクルを阻害し、成長しないチームを作り出すことにつながります。

試行錯誤した結果、私たちが行き着いた答えはOutlookです。当社ではOutlookを使って個人のスケジュール管理を行っておりまして、とにかく全ての作業をOutlookに登録することで工数管理を劇的に省力化する仕掛けを構築しました。

運用イメージ

本記事では以下の青色部分(予定→作業明細→工数集計→売上/請求)について実際の運用イメージを紹介していきます。

作業明細:Outlookから自動連携

1つ目のポイントはOutlook連携です。Outlookに入力されたスケジュールはPower Automateを使って15分おきに自動でPowerAppsに連携されるようにしています。変更があった場合も自動で同期されます。

Outlookカレンダーに日々の業務内容を登録:

Outlookカレンダーから自動でPower Appsにデータを連携:

Power Apps上に作業明細が自動作成される:

あとは作業明細に対してプロジェクトコードを選択するだけ:

Outlookにかぎらす、いわゆるグループウェアを工数管理の入り口として使うことの大きなメリットは、他人が勝手に工数を入れてくれるということです。社内外を問わず誰かが打ち合わせを主催すれば、それが自動でOutlookのスケジュールに登録され、さらにPower Appsに作業明細として自動で連携されるため、参加人数に関わらず組織全体で工数入力にかかる入力作業は0~1回で済みます。繰り返しスケジュール(?)みたいな機能を使えばその効果は尚更です。

PowerAppsに連携されてきたら、各自がプロジェクトコードを選ぶだけで工数入力は完了です。開始-終了時刻も作業内容も工数も作業場所も、全て自動で記録されます。

工数集計:PowerBIを集計エンジンとして利用

もう一つのポイントはPowerBIを業務に組み込んでいることです。いわゆるタイマテ(Time & Material)でご請求させていただくプロジェクトの場合、請求可能な作業明細を集計すればそれが当月の請求書になります。請求金額を集計する仕組みを当社ではPower BI + Power Automateで構築しており、ボタン一つでBusiness Centralに請求データが自動生成されます。

工数を自動集計し、当月の請求予定明細をPowerBIで自動生成:

請求依頼が飛んでくる:

承認されると請求データがBCに自動作成されます:

詳しくは別記事(原価計算/会計 編?)で解説しますが、請負契約の場合は仕掛原価を算定して資産計上する必要があります。その計上や取り崩しの仕訳もPowerBIで自動作成してBusiness Centralに連携されるようにしています。

売上/請求:Business Centralから請求書をメール配信

PowerBIで集計され連携されてきた売上データをもとにBC側で請求書や納品書(サービスレポート)を作成し、これをメールでお客様に提出します。ここはBCの標準機能をそのまま利用しています。

絶対に二重入力は避ける

・・ということで、Outlookに入れた情報が最終的に工数集計、売上計上、請求、原価計算にまで自動で流れていく仕組みについて当社の運用イメージを解説してきました。

業務設計を考えるとき、大原則の1つは二重入力を避けるです。プロジェクト型のワークスタイルが求められるような業態の企業においては、作業と原価と仕掛と売上と勤怠という5つの要素が相互にトレースできる状態が理想です。これらを5重入力(!)している企業も少なからず存在しますが、業務上非効率なだけでなく、原価や仕掛金額の根拠を即時にトレースできないような状態は内部統制が効いているとは言い難くリスキーです。

システム的な観点からは、多くの場合、情報系(SoE: System of Engagement)と基幹系(SoR: System of Record)をつなぐというのが2重入力を避けるための有効な手段になります。このような仕組みを時間をかけずに組むことができるのはPowerPlatform + Dynamics 365を使う大きなメリットであります。

当社の社内における業務設計やシステムデザインを公開していくこのシリーズも、次回は・・未定です。。

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