Microsoftが提供している中小企業向けERPであるDynamics 365 Business Centralに債権と債務を自動で相殺する機能が登場しました。
Business Central (BC) は他のDynamics 365シリーズと同様、半年に一度バージョンアップがかかる仕組みになっております。この春のバージョン (2022 Wave 1) ではさまざまな機能拡張が行われているのですが、実務視点で非常に重要といえるのがこの相殺機能です。
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実際の動きを解説します。
実際のBCの画面をつかって相殺機能の動きを説明していきます。割とシンプルな機能です。
得意先と仕入先の紐づけ
BCでは得意先と仕入先は別々のテーブルとして管理されており、同じ取引先(得意先かつ仕入先)であったとしても別々のマスタとして登録を行います。
ただ、当然ながら、相殺を行うためには特定の得意先と仕入先を紐づけて同じ取引先であると認識させる必要があります。これはかなり古いバージョン(BCの旧製品名であるDynamics NAV時代)からひそかに存在していた機能なのですが、BCでは連絡先(Contact)というマスタをつかって得意先マスタと仕入先マスタを紐づけることができます。今回の相殺機能についてもこの連絡先というマスタがキーとなります。
連絡先マスタ(≒取引先マスタ)というものの下に得意先と仕入先をぶら下げて階層構造をとることで得意先と仕入先を紐づけることができます。
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得意先画面で債務金額の確認が可能
得意先と仕入先を紐づけると、以下のように得意先マスタの画面で”債務”の金額を確認できるようになります。
Balance as Vendor = 債務残高 が表示される:
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仕入先画面で債権金額の確認が可能
同様に、仕入先マスタの画面でも”債権”の金額を確認できます。
Balance as Customer = 債権残高 が表示される:
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相殺処理
支払処理を行う画面(支払仕訳帳: Payment Journal)上で相殺ボタンを押すと、自動で債権と債務を引き当てて仕訳を切ってくれます。
得意先/仕入先累計残高 (Net Customer/Vendor Balances) をクリックすると自動で相殺仕訳が作られます。
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自動生成された相殺仕訳:
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もちろん、それぞれの補助簿 (Customer Ledger / Vendor Ledger) も自動でお互いに消込がかかります。適用先ID(消込における済印的なものです。)が自動でついています。
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まとめ
ということで、グループ内取引の多い企業や有償支給をしている(または有償支給をうけている)製造業など、相殺処理が恒常的に発生する企業においては非常に有用な機能かと思います。