Microsoftの中小企業向けクラウドERPであるDynamics 365 Business Central のマイナー機能を紹介していくこのシリーズ。

今回のテーマは”過去の実績をもとに予算編成を行う”です。

BCの予算管理機能はかなり優秀なのですが、きっちり活用しきれている企業はあまり多くないのではと思います。本記事では、そんなBCの予算管理機能の中にある”予算コピー”というマイナー機能について解説していきます。

Dynamics 365 Business Centralは、マイクロソフトが開発した中小企業向けの多言語・多通貨対応のERPシステムです。販売管理・在庫管理・生産管理・会計・債権債務など、企業の基幹業務をクラウド上で統合的に管理することができます。また、WordやExcel、Teams、Outlookなど、他のマイクロソフトのサービスと組み合わせて業務を効率化する仕組みが多数搭載されています。

BCの予算管理機能

予算管理

BCの予算管理機能はかなり優秀で、予算のパターンを無限に持てることや、予算を持つ粒度を任意に指定できることから、さまざまな使い方ができます。

一般的には、「通常予算」「補正予算」「IR用予算」「楽観予算」「悲観予算」「着地予測」といったように複数の予算パターンを用意しておいて、レポートを表示するときにどのパターンと比較するかを選択する、という活用方法が考えられます。

また、「売上総利益までは科目別部門別プロジェクトに細かく予算を立てる」とか「販管費は機能別にザックリ予算をたてる」といった、気の利いた予算の立て方が可能です。

予算編成

一方で、BCの予算編成機能は割とシンプルなつくりになっており、「Excelで空の予算書を作って各部門にばらまき数字を埋めてもらい、その結果を回収して取り込む」というボトムアップでの予算編成機能はあるものの、各現場とKPIをすり合わせていくような機能まではありません。

しかし、この予算編成のプロセスを効率化するために使えるマイナー機能があります。それが本記事でご紹介する”予算コピー”です。

実績もコピーできるよ

予算コピーはその名の通り予算をコピーして新しい予算パターンを作る機能で、「当初予算をコピーして残しておいた上で補正予算を作ろう」みたいなときに使われるのですが、それだけではありません。

あまり知られていない機能なのですが、BCの予算コピーの画面では、コピー元(ソース)として”過去の実績”(予算ではなくて総勘定元帳)を選ぶことができます。

また、係数をかけながらコピーする機能もあるため、「今年は成長率15%で行こう!」という社長の鶴の一声で予算が決まるような企業も安心して使えます。

トップダウン+ボトムアップ での予算編成

一般的な予算編成のプロセスとしては経営企画部が予算案を立てて、それを各部門とすり合わせていく、という”トップダウン+ボトムアップ”型の進め方を行うことが多いと思います。

BCの標準機能と照らし合わせたとき、”予算コピー”の機能を使って作成された予算案をトップダウンで各部署に下ろし、すり合わせた結果をボトムアップで受け取ってExcelインポートでBCに取り込む、という使い方が想定されれます。

予算機能の拡張

とはいえ、詳細なシミュレーションを行ったり、ボトムアップで上がってきた予算を差し戻して現場部門とすり合わせたり、といった”ザ・予算編成”みたいな機能はBCにはないため、この辺をきっちりやろうとするとAdaptive PlanningとかHyperionのような専用のサービスと組み合わせる必要があるかと思います。

年に1回の予算編成のためにそこまでコストをかけられないっすよ、という場合はPower Appsで予算編成を行うような仕掛けを開発するという手もあるかなと思います。

少し予算編成というテーマからは離れますが、当社で過去に開発した例としては「Power Apps上で稟議書を回し、承認されたら予算番号(つまりプロジェクトコード)が採番されてBCに予算が計上される」というものがありました。

経費統制を考えたとき、稟議書の通りに予算が執行されているかを細かくモニタリングするのはなかなか大変ですが、上記のような仕組みがあると稟議書単位(プロジェクト単位)で予実が簡単に比較できるので良いですね。

まとめ

・・ということで、今回はBCのマイナー機能の一つである”予算コピー”について解説してきました。

このように、画面の中の一つのボタンを押したときの動きをひとつひとつ実務と照らし合わせて突き詰めて考えていくのは、ERPを正しく導入するという観点からはとても大切なことだと再認識しました。時間を作って日々勉強しなければいけないですね。

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